日本と中国では、教育制度が似ていることから、文法や読解力、語彙力に焦点を置いた英語教育がなされてきたといわれている。そんな両国の英語教育は今、「コミュニケーション能力重視」という壁にあたり、大きく変化している。
「コミュニカティブ英語」という言葉が使われて久しいが、実際に使える英語が身につく授業を学校教育の中で受けられる環境にある日本人はまだまだ少ないだろう。しかし、下の表を見ていただきたい。
1987-89 | 1997-98 | |
日本 | 485点 | 498点 (+13点) |
中国 | 509点 | 560点 (+51点) |
韓国 | 505点 | 522点 (+17点) |
『国際文化学と英語教育』阿部美哉編。国際教育交換協議会日本支部代表部。
TOEFL事業部より
80年代終わりからその10年間にどんな変化があったのかと思うほど、中国の平均点が伸びている。日本、韓国はそれぞれ13点、17点の伸びしかなかったのに対して、中国では51点も伸びているのだ。この結果を見ると、中国の英語教育が着実に実を結びつつあることが多少なりとも証明されていると言えないだろうか。
それでは、一体中国ではどんな英語教育改革を行ってきたのかを見てみよう。中国の教育制度は、日本と同じく6(小学校)・3(初級中学)・3(高級中学)・4(大学)制となっており、義務教育も同じく9年間である。ただし、日本と違うのは、中国では各段階を卒業するために統一卒業試験が行われ、留年や飛び級が認められていることである。また、大学における第一外国語の統一試験に合格することが卒業の条件となっているため、日本の大学より外国語(主に英語)の習得に対して厳しい面が伺える。中国では元来、日本語やロシア語が第一外国語として人気があったが、最近ではインターネットの普及などから、国際語である英語を学ぶことがいい仕事に就ける近道、という考え方が浸透しているようである。そんな社会的背景があってか、上海・北京などの大都市では公立小学校での英語教育が導入され始めた。
中国の小学校における英語教育は、従来の文法重視の英語教育を批判し、実用的総合言語運用能力を提唱しており、スキルを身につけることを目標にしている。英語のネイティブを雇うことにはあまり積極的ではないのだが、中国人教師が授業そのものを英語で行うということを徹底しているようだ。日本でも小学校の英語活動が始まったが、国際理解教育の一環として行われているだけで、英語のスキルそのものに重点を置いた中国の英語教育事情とは一線を画すものである。TOEFLのスコアだけが英語力を示すものではないが、少なくとも中国の英語教育が変わりつつあり、それが反映されてきているのは事実である。日本も中国のよいところを取り入れながら、よりよい英語教育環境を作っていってほしい。
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