Ⅰ アジア諸国における英語教育
-研究報告-
<発表者>
コーディネーター 本名信行(青山学院大学教授)
パネリスト
①竹下裕子(東洋英和女学院大学教授)
②相川真佐夫(京都外国語短期大学専任講師)
③樋口謙一郎(早稲田大学助手)
<概要>
①近隣諸国における英語教育-中国の事例から- 本名先生より
- 2001年より全国の小学校で3年から英語が導入。都市部(北京、上海等)では1年から。週4時間。豊富な学習項目。小学校から大学院まで必修科目。英語は「近代化と経済発展」の言語である。
- 大学卒業時には全員英語のテストを課す。合格しなければ卒業できない。レベルは2通り。Band4/6とあり、Band4は大学2年終了、Band6は大学4年まで終了したレベルとなる。進路にも大きく関わってくる。
- 中国にTOEIC、英検は普及していない。
- どの大学へいってもカリキュラムは同じ。「ナショナルシラバス」である。
- 中国では24時間中国人が作った英語漬けのTVプログラムがあり、教材にもなっている。
②近隣諸国における英語教育-韓国の初等英語教育の事例- 樋口先生より
- 韓国の初等学校(小学校)では、第7次教育課程を発表しており、小中高一貫を目指す。
- 小3のときから英語教育を取り入れており、生徒の個性に合わせた選択授業を展開している。
- 韓国はIT大国。教員養成に関しては、民間企業と公教育が連携している。
- 教員の養成が間に合わず、追いついていないのが現状
- 2008年から英語教育開始年齢を初等学校1年生に引き下げることがほぼ決定した。今秋からモデル校にて実施。またイマージョンプログラムも仁川、インチョンなどで実施していく。
③近隣諸国における英語教育-台湾の事例から-
- 人口2千万人の四百分の一である5万人が英語の先生に名乗りをあげ、97%の親が英語を見につけると将来性があると思い、40%の子どもが小学校に入る前に英会話へ通い、60%の親が英会話へ通わせているという現状から、台湾の英語熱はものすごく高いことがわかる。
- 英語のクラスが増えれば国語のクラスが減るということもある。
- 文字を書かせる授業も多く取り入れている。小学校の授業の多くにフォニックスが入っている。
- テストは先生に指示されている。
- 格差がどんどん広がってしまっているのも現状。2極化してしまっている。
- 「中学校の前倒し」は日本では非に近いが、その是非が問われているところ。
④近隣諸国における英語教育-極東ロシアの事例から-
- ロシアにおける英語・・・仲介言語としての扱いとなる。
- 小5~週3時間をめどに行われている。英語だけでなく、フランス語・ドイツ語もあり。第二言語としてのロシア語もある。(ロシアは多民族国家のため、全員がロシア語を母語としているわけではない。)
- ロシアの英語教育の目的は、学習言語によって生徒が交流しあう能力を取得することにある。コミュニケーション能力の形成を目標として行われる。
- ロシアはビザが必要なため、「FEELTA」という団体に入って研究することはとても有益である。
Ⅱ 大学を拠点とした英語教育施策
-教員養成GP、教員研修等の視点から-
<発表者>
コーディネーター 斉藤栄二(関西大学教授)
パネリスト
①森住 衛(桜美林大学教授)
②山岡 憲史(滋賀県立草津東高等学校教頭)
③斉藤 嘉則(仙台市教育センター指導主事)
④田尻 悟郎(東出雲町立東出雲中学校教諭
<概要>
①森泉 衛(大学における英語教員養成の課題)
英語はできないけれども、○○先生の授業は好き、といった教師の育成を今後どう目指すか。
そのためには、質の向上が不可欠。大学の教育課程の実数時間の増加、医師免許などの「見習い」期間の導入が必要である。大学において、「教員養成を担当する教員」の養成にもっと力をいれるべき。いくら研修が充実しても個人の努力なくして教師の資質向上は望めない。
②山岡憲史(資質向上のための3要素をさぐる
まず、教師自身がどういうタイプの人間かをもう一度考えることが大切である。その上で生徒のお手本として教師自らが英語力向上に向け努力すべきである。結果、生徒からの信頼、教師自身の自信につながる。また、授業改善に向けた努力により、生徒の意欲喚起、教師の意欲向上につながる。
③斉藤嘉則(教員研修の射程 ~英語教育の充実に向けて~
教員研修のねらいは、英語(運用)力と指導力(授業力)のバランスの取れた力量形成にある。外国語科(英語)で生徒は何を学ぶかを再認識する必要がある。学習指導要領の再読、実践的コミュニケーション能力を踏まえ、日々の英語の授業で「何を」指導するのか、という根本的なテーマを研修会を通じてもう一度じっくり考える機会の創出が肝要。
④田尻悟郎(出来る喜びで生徒は変わる)
生徒のモチベーション向上には、力がついた、出来るようになった、という実体験が不可欠。具体的には、以下の二点に凝縮される。一つは、英語の授業内で行う様々な活動がしっかりできる、もう一つは、テストで点が取れるようになったという点である。生徒のやる気を喚起させるために、教師は日々授業の工夫をしなければならない。特にoutputと活動を充実させることが重要。
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